シエラレオネ衛生・医療事情一般

2016/3/3

シエラレオネの気候は平均気温26.1度と高温で多湿(71~90%)の熱帯性の気候です。年間の降雨量は2990mmで5月から10月の雨季と11月から4月の乾季があります。電気は停電が多く,発電機を備える必要があります。飲料水の普及率は60%,下水道の普及率は13%と衛生水準は極めて低くなっています。衛生水準が低いため当国ではコレラや腸チフスなど食べ物や飲み物を介した感染症が例年多くみられ,死亡原因の73%が感染症とされています。また,当国には多くの風土病があります。特にマラリアは病院を受診する理由の中でも多く,一年中流行しています。当国で流行しているマラリアは治療が遅れれば死亡する熱帯熱マラリアです。したがって,当国に滞在し生活するためには予防接種や予防薬等これらの感染症への対策が不可欠です。

当国は医療水準が極端に低いので滞在する際には注意が必要です。シエラレオネの平均寿命は46歳で死亡原因はその他を除き,肺炎,下痢,マラリアと続きます。当国の医療従事者は極端に不足しており,例えば医師数は対人口あたりで日本の1/115となっています。医療施設は老朽化し,医療機器の維持や整備も十分に出来ていませんが,多くの患者さんで溢れています。軽症ならば利用できる私立の医療施設もわずかにありますが,富裕層や外国人は欧米等医療先進国で治療を受けています。万一の場合に備えて医療先進国で治療が受けられる水準の旅行傷害保険に加入して下さい。

薬局では限られたお薬しか手に入りません。2014年7月以降,エボラウイルス感染症の流行拡大により医療機関の縮小や閉鎖が相次ぎました。普段から健康に留意し,処方薬を服用中の方は十分量のお薬を準備して下さい。2015年11月7日にWHOよりエボラ終息宣言が出されましたが,2016年1月に再度エボラ患者が発生しているため今後も散発例の可能性に備えて感染予防に努めて下さい。

かかり易い病気・怪我

(ア) 感染性下痢症
 食べ物等を介して感染するサルモネラ,大腸菌,コレラ,腸チフス等多くの経口感染症がみられます。先進国からの旅行者が当地に滞在し,対策無しに飲食を続けると1ヶ月で80%が感染性下痢症に罹患するとのデータがあります。発熱や嘔吐することもあります。ホテル内を含むレストラン等で食事をする場合は十分加熱した物を食べ,生野菜やカットフルーツも注意してください。飲料水は蓋のされたミネラルウォータを使い水道水や氷等は避けてください。渡航前に腸チフスワクチンの接種を勧めます。

(イ) マラリア
 最も注意すべき病気です。WHOによると発生率は19,027人(100,000人対)と一年を通じて感染者が出ます。首都フリータウンでも感染します。当国のマラリアは致命率の高い熱帯熱マラリアです。予防として,ハマダラ蚊が活動する夕方から明け方の外出を控え,外出するときはなるべく長袖・長ズボンを着用し,虫除けスプレー等蚊の忌避剤の使用を勧めます。さらに室内への蚊の侵入を防ぐために,窓に網戸を張り,窓を閉めてエアコンを使用してください。蚊取り線香,電気式蚊取り器や蚊帳も有効です。万一,38度以上の発熱があれば,マラリアを疑い最寄りの医療機関を遅滞なく受診してください。滞在の期間や形態を勘案し,予防薬服用を旅行医学専門の医師に相談してください。予防薬を当国内の薬局で購入することは困難です。

(ウ) 黄熱病
 当国は黄熱病の汚染地域となっています。シマ蚊類が媒介し,初期症状は激しい頭痛,腰痛と発熱で始まる死亡率の高い病気です。黄熱病予防接種は当国の入国条件になっていますので,事前に接種をして有効なイエローカードを持参して入国してください。

(エ) 狂犬病
狂犬病はウイルス疾患で主に犬などの動物が媒介します。当国では動物に咬まれたり引っ掻かれると感染する危険があるので動物と一定の距離をおいてください。感染すると神経に沿ってウイルスがひろがり麻痺を引き起こします。動物と接触する機会が多い方は渡航前に予防接種を検討して下さい。発症すると有効な治療法はなく脳に感染すると昏睡や死亡の原因となるので受傷後は創部を5分以上流水で洗浄・消毒し,出来るだけすみやかに医療機関で受傷後ワクチン接種を開始してください。

(オ) A型肝炎
 A型肝炎はウイルスが人から人あるいは食べ物や飲み物を介して経口的に感染し、稀に劇症化します。不衛生な環境では感染する危険があるので,A型肝炎は抗体の有無を確認のうえワクチンの接種を勧めます。

(カ) 髄膜炎菌性髄膜炎
 当地はアフリカ髄膜炎流行ベルト地帯に位置し,北部を中心に乾季に流行します。まれな疾患ですが,発症すれば重篤になり得ます。感染者と接触すると感染する危険性がありますが,予防として予防接種が有効です。地方に長期滞在する方は接種を考慮してください。当地で一般的に接種されるワクチンは二価(A,C)ですが,最近はWタイプが流行することが多いので四価(A,C,W,Y)ワクチンの接種を勧めます。

(キ) デング熱
この病気は都会の汚れた水でも増殖するネッタイシマ蚊が媒介し日中に活動するので旅行者が感染する可能性があります。症状は急性の頭痛,関節痛,筋肉痛を伴う発熱で発疹をみることもあります。急性症状は10日程続き,回復には2-4週間程かかります。出血傾向を示すものはデング出血熱と呼ばれ重症です。

(ク) HIV/AIDS,B型肝炎,C型肝炎
 HIVの罹患率は965人(100,000人対)と報告されています。HIV/AIDSは死亡原因の5位を占めます。HIV,B型肝炎,C型肝炎は主に血液,体液を介して感染します。輸血を要する事態が発生すればこの点に十分な注意が必要となります。B型肝炎は抗体の有無を確認のうえワクチンの接種を勧めます。

(ケ) 結核
当国では2012年の罹患率が1,304人(100,000人対)と報告され, 10大死亡原因の一つとされています。感染者と接触してもすぐに感染することはありませんが,感染者と長時間接触していると感染する可能性があります。運転手やメイドなどを雇用される方は使用人の健康に留意してください。

(コ) ラッサ熱
 この病気は,ネズミ等齧歯類が媒介する死亡率の高いウイルス病です。患者からのヒト-ヒト感染もあります。ネズミを見かけるような不潔な住環境で危険性があります。また,近隣で患者発生の情報があれば体調の悪い人と接しないようにしてください。

(サ) エボラウイルス感染症
 エボラウイルスが引き起こす,致命率が約40%と非常に高い感染症です。2014年に初めて西アフリカで大流行しました。以前はエボラ出血熱と呼ばれていましたが,必ずしも出血の症状を伴わないためエボラウイルス感染症と呼ばれるようになりました。近隣国のギニア,リベリアでも大流行し,ナイジェリアやセネガルにも波及しました。専門家によると自然宿主はフルーツコウモリと言われていて,コウモリから直接あるいはチンパンジーや小動物を介し人間に感染するとされています。ヒト-ヒト感染は患者やご遺体の血液,分泌物,排泄物などの直接接触を介し,皮膚の傷口や粘膜などからウイルスが侵入することで感染します。また,患者のいる家庭や医療施設での感染率が高いとされています。潜伏期が2~21日と幅が広く,初期には発熱,頭痛,嘔吐,下痢など他の感染症の症状と見分けがつかないため,流行国への渡航歴や患者との接触歴があれば診断には検査が必要です。専門家によると症状を呈していない患者からはウイルスが感染しないので,空港や機内での感染の危険性は低いとされています。感染予防のためには頻回に石けんと流水で手洗いを行うとともに,エボラを疑う患者やご遺体の血液・体液・嘔吐物や動物の死体に直接触れないようにすることが重要です。消毒用エタノールを含む手指消毒剤や0.05%次亜塩素酸ナトリウムでの手洗いもウイルスに有効です。

(シ) その他寄生虫症
リンパ系糸状虫症,オンコセルカ病,腸管寄生虫症(回虫症,釣虫症),リーシュマニア症等が認められます。全国に生息するツェツェ蠅は吸血昆虫で,トリパノソーマというアフリカ眠り病の病原虫を媒介します。刺されることはあまり多くありませんが,屋外では長袖長ズボンの方が安全です。特定の蠅の幼虫が洗濯後の衣服を介して皮膚に感染する病気(蠅蛆症)があります。衣類は室内に干すか,アイロンをかけてから着用するようにしてください。

(ス) 交通事故
 道路の整備が需要に追いつかず交通渋滞が頻発しています。特に夜間は運転マナーが悪いことに加え街灯も少なく危険です。安全運転を心がけ、乗車中はシートベルトを着用し交通事故に十分注意してください。運転手付きレンタカー等の利用を検討してください。